働きがいのある会社 診断レポート No.1
「地域で困っているすべての方へ癒しの未来を」という想いを持って設立した訪問看護ステーション
株式会社ワンラブ
企業名 | 株式会社ワンラブ |
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所在地 | 大阪府堺市南区 |
設立 | 2010年 |
資本金 | 200万円 |
従業員数 | 16名 |
事業内容 | 訪問看護、介護ウェア販売、 デイサービス(準備中) |
Webサイト | http://www.onelove-nurse.com/ |
株式会社ワンラブは、2010年に当時20代だった社長の加藤麻弓さんが「地域で困っているすべての方へ癒しの未来を」という強い想いを持って設立された会社で、訪問看護ステーションとして高齢者や重度障がい児の訪問看護にあたっています。2013年には、看護の現場の声を反映した「キラクン」(障がい児用ロンパース)「着楽」(大人用介護つなぎ服)という自社商品も開発して、よりよい在宅看護を目指して成長している会社です。
スタッフも、社長の想いに惹かれて入社する人が多く、今では社員16名になり、そのうち12名が女性です。子育て中の人も複数います。
しかし、スタッフが増えるにつれて、社長は、自分の想いが全員に伝わっているのか、スタッフが今の仕事に満足しているのかという疑問・不安を抱くようになり、「働きがいのある会社診断」の受診を希望されました。
診断結果
「働きがいのある会社診断」は、次の6つの評価項目について、社長と社員(複数の方)にそれぞれ個別に質問・ヒアリングを実施し達成の度合いを回答していただくことで現状分析を行います。6つの評価項目は、次のとおりで各項目はそれぞれ25点満点となっています。
- プロ意識がもてる(やりがい)
- 成長できる(育成)
- 認められる(評価)
- 心地よく働ける(環境)
- 自社に誇りが持てる(業績)
- 会社と自分のベクトルが合っている
今回は、社長と各々職種(担当業務)の異なる3名の社員の方に回答いただいた結果、次のグラフのような結果になりました。(青線が社長の回答、赤線が社員3名の回答の平均値です。)
社長へのヒアリングから
現状についての社長の回答は、合計150点満点中105点でした。 評価項目ごとに見ると、次のような認識をお持ちです。
<やりがい・人材育成・評価>
- 社長から見ると、社員・スタッフひとりひとりの現状の仕事ぶりは、一応の及第点ではあるものの、組織的な権限移譲はまだできておらず、それと相まって各自の仕事の上での創意工夫もまだまだ十分なレベルには達していない。
- 社員ひとりひとりは目標をもって働いており、会社としてもそれをバックアップする体制がある。ただし、ロールモデルを紹介したり目標を達成するための制度整備には、まだまだ改善の余地がある。
- 昇進・昇格や人事評価については、個々には行っているが体系的なしくみの整備はまだ未着手である。
<企業風土・環境整備>
- 就業規則、勤務条件・休暇等については、一定整備されているが、定着率や職場環境の整備は、現在改善中である。
<業績・CSR>
- 規模の面では、業界のリーダーではないが、社長の理念や経営方針が社外からも一定の評価を受けている。
<会社の方向性>
- 設立時からの経営者の強い思いや価値観が社員にも共感を得ている。社員の目標との一致、認識の共有については、取り組みの半ばである。
社員へのヒアリングから
次に、ヒアリングした3名の社員の評価の平均としては、合計150点満点中112.7点と、社長の評価点より高くなりました。各評価項目については次のようになっています。
<やりがい・人材育成・評価>
- 現在の自分の仕事については、看護の現場にある社員は同僚の状況も含めてまだまだ満足していない。他の専門スタッフは自分の分野については一定の評価をしている。全体としては、社長の認識よりも評価が高くなっている。
- 成長という観点でも、看護職の社員は、まだまだ自他の現状に満足していない。会社がまだ若く同じ職種・立場の社員が少ないこともあり、自分のキャリアの目標になるロールモデルやキャリアパスについては、全員が必要性を感じている。社長の認識よりも評価が低くなっている。
- 昇進・昇格や人事評価については、全社的な基準は明確ではないものの、各自の評価には満足しており、社長より評価が高い。
<企業風土・環境整備>
- 就業規則、勤務条件・休暇等については、きちんと整備されていて評価が高いが、社員によっては、同僚の定着率や職場の清掃・清潔(5S)に不満をもっている。
<業績・CSR>
- 規模の面では業界のリーダーではないが、社長の理念や経営方針が社外からも一定の評価を受けているという認識は、社長と認識が一致している。
<会社の方向性>
- 経営者の人生観・価値観に必ずしも全面的に共感しているわけではないが、社長の事業への思いは十分伝わっており、自分たちの目標とも合致している。
課題と改善提案
株式会社ワンラブは、このように社長が思っている以上に社員は働きがいを感じている会社ということがヒアリングの結果わかりました。 そして、より働きがいのある会社になるための課題と改善内容は次のように考えられます。
全社評価
- 「プロ意識をもっている」「認められる」という2つの項目では、社長よりも社員の評価が高くなっており、各社員は誇りを持って働き、また、社長から認められていると感じている。
- 反面、会社内での自分自身の今後のキャリアの成長の方向性や働き続けることによる昇進・昇格などの制度整備については満足しておらず、どちらかというと不安を感じている。
- 会社の環境整備については、社長と社員の評価がほぼ同じで、一定の満足を得られている。課題は、定着率を上げることと、5Sの改善である。
- 収益性や規模という点では満足とはいかないが、自社に誇りをもち、会社の目指す方向性については、概ね社長に共感している。
- 全体として、社員の評価点数が社長の評価よりも少し高くなっており、社員の働きがいに対する満足度は得られている。
- 創業後5年間の各種の取り組みの成果が、現在の評価となって表れているといえる。
改善提案
- 社長も認識しているように、労務面での就業規則や勤務条件は整備されているが、人材育成という視点での仕組みづくりは今後の一番の課題である。
- ひとつは、社内の各業務に対応した組織体制と、その中での各自の業務分担・責任と権限を明確にすること。
- ふたつ目は、社員が「この会社で働き続けること」=「自分のキャリアアップ」と「会社の成長への貢献」に繋がると実感できる制度を、社員とともに作り上げることをお勧めしたい。
今後は、上記の提案を実践することによって、現状(青線で社長と社員の平均値を表示)に対して、赤い点線のように全体の働きがいのバランスが向上することを目指しています。
2015年4月 担当コンサルタント 北口 祐規子