Scene1:出勤途上で上司と遭う
いつもと同じく今日も7:15発の電車に乗り込み会社に向かう。会社までは、ここから私鉄で約20分かけてターミナル駅に出て、その後JR線に乗り換えて約10分の距離である。もう少し早めに家を出れば、電車も空いており、乗り換えなどスムーズにいくのはわかっているが、長年の習慣なのでついこの時間になってしまう。電車に乗っている間は、世間一般の情報を仕入れる絶好の機会である。自分の仕事に関連する分野だけにどっぷり浸かっていると視野が狭くなると自覚しているので、車内ではできるだけ中吊りの広告を見たり、他人をウォッチングしたりしている。
そうすることによって仕事に役立つアイデアが浮かんできたりするので、その際はせっかくのアイデアを忘れないようこまめに手帳にメモすることにしている。手帳はこの他にも仕事管理やスケジュール管理など、ビジネスマンにとっては必要不可欠なアイテムだ。
しかし、今朝は少し違った。実は、昨日の夕方、部長に呼ばれたのである。先日行われた取引先へのCS(顧客満足)アンケートの結果を言い渡され、その改善に向けて、自分のチームでのアクションプランを2週間後までに立てるように言い渡された。その調査とは、自社の得意先工場や卸売り業者等の関係する企業からのフィードバックであるが自分が所属するチームの製品の業界内シェアが落ちている原因が細かく報告されている。
チームのメンバーを集めて意見を出し合わなければならないが、業務に追われ、毎日遅くまで残業しているメンバーを集める時間があるだろうか、また快く集まるだろうかなど、頭の中は錯綜していた。途中で結果をまとめた資料を出しては、ため息をつき、考え込んでいた。
ターミナルでの乗り換え時、年上の紳士に声をかけられた。課長である。考え事をしていたためか、気づかなかった。失礼を詫び、考え事の原因が、アンケート結果にあり、通信簿をもらったときのような気持ちで今、悩んでいることを正直に伝えた。